07/05/22
メディアには気をつけよう
いまや多かれ少なかれ、また好むと好まざるにかかわらず、メディアに影響を受けて生きています。ナポレオンの時代では、戦争の勝ち負けといった情報は飛脚とか馬で運ばれてれていました。ロスチャイルドが株式投資で巨額の利を得たのは、馬が情報を運んできたから。今では好まなくても毎秒テレビや新聞でニュースを入手していますので、私たち投資家はいやでも脳が反応してしまいます。「市場は何でも知っている」、つまり株価は「すでに情報を織り込んで形成されている」と主張する派は、理想主義者かアカデミックでしょうが、「好材料が発表になると株価が下がる」現象を「材料出尽くしの売り」となります。企業の発する情報を投資家が等しく入手して行動するというのは、私の考えでは、単なる理屈であって現実ではないと思います。すでに売ってしまっている人たちの後を一周遅れで売っている自分の像がイメージされます。
とはいっても、悪材料出尽くしで「悪材料が発表になったとたん、株価が反発する」例も多いですので、古今東西の投資心理であることも確か。平たく言えば新聞の見出しになる好悪決算を動機に株式を売買するというのは、危険であるということは間違いないです。メディアに引っかかる投資家の多くは「初めて知った、それ投げろ」ということよりも「ヤッパリそうか、もうあきらめよう」と新聞記事を“売買のきっかけ”にする人が多いようです。企業情報入手にハンデを負う個人投資家はそういう売買決定をする以外に確かな情報を得る手段がないのですね。「個人投資家にもっと情報を流しなさい」という当局の指導は個人が不当な不利益をこうむらないようにするため、企業とアナリストはできるだけフェアーな情報の取り扱い(発表の場とかタイミング)をしなさいという意味です。
私が働いていた機関投資家では、新聞に見出しが出る段階で、好決算を予想してすでに大量に仕込んでいたり、また悪材料が出る段階ですでに持ち株のおおかたを売っていたりしました。無論それは企業がアナリストに教えられる情報の範囲であって、それ以上の企業秘密については突然の発表に慌てふためきます。つまりインサイダー情報(特定の人とか経営者のみが知りえる情報)はいくら足しげく企業訪問をしていても入手できません。しかし、優れたアナリストは教えられた情報をメモ書きにして帰ってくるだけではなく、経営者との会話の中から「唇を読む、行間を読む」ような感じを捉えることが出来ます。それも「日頃その企業を訪問している努力のタマモノ」といっていいでしょう。
「効率的市場仮説」という説があります。それは誰でも同時期に同じ情報を得ていて、株価はそれを織り込んでいる、と言うものですが、本当は、そのようなことはまったくありません。実際には、市場は不平等で非効率です。ですから、投資家サイドの努力とか経験が生きてくるわけです。たとえば、ブルマーケットの初期に(それとてもなかなか判断つきかねますが)、強い情報が新聞に出てきたら、売りではなく買いになります。素直に趨勢に従うわけです。逆に、十分に円熟した市場で好材料が出てきたら、もう終わりも近いと思うべきでしょう。多くの情報を多くの人がいちどきに共有することなどは絵に描いた餅でしょう。コントラリアンというのは反対思考──へそ曲がりの人のことですが、市況の極端な弱気とか強気の時期にはおおいに効果があります。つまり「人の行く裏に道あり花の山」の実践は年中効果を発揮するわけではありません。
株式投資の世界では新聞だろうが雑誌だろうが、テレビだろうが情報を知るということは一番大事な条件ですが、そのような情報はすでに多くの人がすでに得ていると思うのが妥当です。ということはそのような公開されている情報をもとに株式投資をすることは、世の中に遅れて行動していると思うべきでしょう。それを認識することが「投資リスクを理解する」ということなのです。誰でも知っているような情報で投資するなら、それでも負けない「投資センス」が求められます。いい投資家というのはそのセンスを身につけている人たちではないでしょうか。
更新日
2007年05月22日 火曜日
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