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荒れ相場を乗り切るための心理学講座 第2回「損切りできない」

荒れ相場を乗り切るための心理学講座
第2回「損切りできない」
損切りできない人は「オレオレ詐欺」にも騙される?
前回の「狼狽売り」に引き続いて、今回は個人投資家にとってもっとも悩ましい問題、「損切りできない」を心理学的に読み解いていきましょう。
実際、難しいですよね、損切りは。コンセプトは当然理解できる。儲けている投資家が、これを確実に実行しているのも分かる。でも、こと自分でやるとなると、なかなか出来ないんだよなー、と言うのが多くの個人投資家の意見でしょう。「儲けるために株を買った」という自分の行為を自己否定するような、「損をしているのに売る」のはとてつもない痛みが伴います。
でも、よく考えてみると、これって日常生活でもありますよね。一度やると言ったら、最後までやりきらないと気持ち悪いってこと。ほら、ことわざだって、「武士に二言はない」とか、「男子の一言金鉄の如し」、なんてのが目白押し。実際、社会の評価もそうで、職場でもプライベートでも、自分の言葉に責任を持たない人って評価されないし、何よりも、自分自身でそんな人間になんかなりたくない。
こういう話をすると、「あぁ、日本は儒教の影響が強いからね」、なんて、したり顔で言う人もいますが、ことはそれほど簡単ではありません。自分の言葉に責任を持つことは、世界中で評価されています。中国にだって、昔の武将を題材に、「季布の一諾」なんて言葉があるし、英語だって、「オレの約束は樫の木よりも固いぜ(stronger than the oak)」なんて表現があるくらいで、世界中の人間のこころに強く強く刻み込まれているのです。
実際、あまりにも強力であるがゆえに、かえって自分に不都合な結果になっちゃうこともあるぐらい。「コミットメント(首尾一貫)の罠」なんて言われますが、詐欺師とか悪徳セールスマンなんかは、自分の言葉に責任を持つ心理を逆手にとるのが上手。
たとえば、皆さんご存じの「オレオレ詐欺」。あんな単純なシカケに騙されるのかー? と不思議に思うじゃないですか。でも、最初に、電話の相手は自分の息子であると信じてしまうと、もう「コミットメントの罠」のスイッチが入ってしまうのです。後はある意味自動的。「電話の相手は自分の息子である」という、自分の下した判断を正当化するように心のメカニズムが作用して、ちょっとぐらい変なことがあったとしても、「そんなはずはない」と自分に言い聞かせながら、最後の振込ま でいってしまいます。
でも、不思議なのは、なんでこれほど強力に、「自分の言葉に責任を持つ」心理が世界中の人間に普遍的に組み込まれているのでしょう? その答えを探りに、昔にさかのぼって、人間の心が発達してきた道筋を見ていきたいと思います。
